造影超音波による肝腫瘤診断
造影超音波による肝腫瘤診断
肝腫瘤・超音波診断基準 第3 版が2025 年夏にup dateされました. ぼくも横浜市大附属市民総合医療センター消化器病センター内科の責任医師として在任時期にこの企画に参加しており、肝腫瘤の質的診断の部位を主に担当しておりました.
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超音波造影剤ソナゾイドは2002年に世界に先駆け日本で治験が開始され、2007年1月から国内どこでも使用が可能となりました. わたしは治験から関与しており、長期間使用していますが、大きな副作用報告は公的には一度もなく、自分自身も経験ありません. 肺で分解され、息で体外に排出されますので、CT/MRIの造影剤が使用できないかた、腎臓の悪いかた、妊婦さんにも使用可能で安全な検査薬です. もちろん放射線被ばくもありません. 造影超音波は3割負担で約6千円、造影CT約1万円/造影MRI約1万5千円よりも安価です. わたしは肝腫瘤の超音波診断基準の委員で質的診断、すなわちソナゾイド造影超音波での肝腫瘍診断を担当しておりましたので簡単にご紹介したいと思います.
肝腫瘤・超音波診断基準 第3 版でのソナゾイド造影超音波の大きな改正点
- 動脈相(20-45秒)、門脈相(60-120秒)、後血管相(10分)の3相でしたが、門脈相と後血管相(Kupffer相)の間に移行相(2-10分)をもうけました. 自身の経験からですが以前よりも短い時間で診断できるようになりました.
- 腫瘍血管の方向性を大別しました. すなわち辺縁から中心に向かう(求心性)か、中心から辺縁に向かう(遠心性)かです. 遠心性の場合は、原則、過形成結節という良性結節であり、その所見があれば、限局性結節性過形成または再生結節である可能性が非常に高いです.(Abdom Imaging 2015;40: 2372-83, J Med Ultrason.;44:89-100, 2017, J Med Ultrason 2020; 47:215–237). それ以外の肝腫瘤では求心性
- 良性の肝腫瘍である血管筋脂肪腫を追加しました.
肝腫瘤の鑑別診断
肝細胞癌の典型的な造影超音波所見
動脈相で白く染まり、移行相以降黒く抜けます.
肝血管腫の典型的な造影超音波所見
動脈相で腫瘍辺縁部から斑状に染まり、次第に内部が染まっていく(fill-in). Kupffer相で黒く抜けます.
日本人の10人から20人におひとりくらいの頻度だといわれています。
High flow type血管腫 (腫瘍辺縁から染まるが、すぐに内部まで染まるタイプ) 移行相で黒く抜けます.
胃癌の肝転移
動脈相で腫瘍辺縁部がリング状に染まるが門脈相ではリング状に黒く抜ける. ほかの癌からの転移もほぼ同様
限局性結節性過形成 (FNH: focal nodular hyperplasiaという通称で呼ぶことが多いです)
腫瘤の中央部から腫瘤辺縁部にむかって放射状に血管が走行(spoke wheel pattern).
後血管相(Kupffer相)で中心部(central scar)以外は周囲と同等の輝度を呈します.
血管筋脂肪腫 血管、筋肉、脂肪が混合した良性腫瘍です. 動脈相で染まり、静脈に
早期に造影剤が流入するのが特徴です. 肝細胞癌との鑑別が重要です.
融合画像と造影超音波を用いた肝細胞癌の診断と治療アシスト
磁場発生装置と磁気センサーを用いると、造影MRI/造影CTと超音波の空間座標をほぼ一致させることが
できます. そうすると造影MRIまたは造影CTで検出した肝細胞癌を超音波で比較的容易に検出可能となります.
さらに造影超音波を用いて、肝細胞癌の正確な位置を確認することができます.
超音波と造影MRIの融合画像 動脈相 後血管相で穿刺可能
超音波と造影CTの融合画像 通常の超音波で検出不可 動脈相 後血管相で穿刺可能
融合画像と造影超音波を用いた早期肝細胞癌と大型再生結節の鑑別診断
早期肝細胞癌の超音波と造影MRIの融合画像 動脈相で求心性の腫瘍血管を認める
大型再生結節の超音波と造影MRIの融合画像 動脈相で遠心性の腫瘍血管を認める
上記のように肝腫瘤の多くは造影超音波で診断可能です.
慢性肝炎や肝硬変のような慢性肝疾患は超音波エラストグラフィーで推定可能です.
当院では造影超音波、超音波エラストグラフィーはともに実施可能です.
