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代謝異常関連脂肪性肝疾患MASLD

健診で肝機能障害を指摘され、体重増加傾向の方の場合は、代謝異常関連脂肪性肝疾患であることが多く、肝硬変、肝がんのみならず、糖尿病、高血圧、心臓病、脳血管障害等の関連が注目されています。すなわち肝臓以外の病気も大きく関与しています。このような病気を早くに認識し、日頃の生活習慣を見直していくことが重要です。

代謝異常関連脂肪性肝疾患MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)の診断

J Hepatol 2023; 79 (6): 1542-1556;肝臓 65巻9号 420-432, 2024

  1. 肝脂肪蓄積の確認(腹部エコー、単純CT/MRI、FibroScan CAPなどです) (線維化診断は超音波またはMRI elastography)
  2. 代謝異常の有無(以下のうち1つ以上)
    • 肥満(BMI ≥25)アジア人だと23 ≥
    • 高血圧(収縮期≥130mmHg、または降圧薬服用)
    • 2型糖尿病、またはHbA1c≥5.7%、または2型糖尿病薬の使用
    • 高TG(≥150mg/dL)または低HDL(男性<40mg/dL、女性<50mg/dL)もしくは脂質改善薬の使用

MASLDは日本においても2,200万人以上いると推定 (総合健診 2024年51巻6号:531–538)されておりますが、

  • 20〜30%の人がMASH metabolic associated steatohepatitis (炎症や線維化を伴う脂肪性肝炎)に進行 (Hepatol Res 2023; 53: 1059-72.)
  • MASHの約20%が将来的に肝硬変になり、さらに年間約2%が肝がんを発生、MASHの定義が新しいためNASHでの統計(日本肝臓学会編 NAFLDの予後 NASH/NAFLDの診療ガイド2015)
  • MASLDがあると、糖尿病・高血圧、心筋梗塞・脳梗塞のリスクも上昇  逆にMASLDかつ肝障害例には生活習慣改善で糖尿病発生率が低下 (J Occup Health 62(1): e12109, 2020)

(Lancet Gastroenterol Hepatol 2023; 8 (10): 866―868; 肝臓 65巻9号 420-432, 2024)

MASLDの病態には肥満、糖尿病(インスリン抵抗性を含む)、脂質異常症などメタボリックシンドロームの因子やアディポサイトカインの産生異常などが背景に発症するmultiple parallel hits 仮説が提唱されている(Hepatology, 52(5): 1836-1846, 2010)。
MASLD有病率はBMI 25超かつ30未満では63.4%、BMI 30超では89.1%  (J Gastroenterol 47(5): 586-595, 2012)
MASLDの発生には腸内細菌叢の乱れも重要と考えられ、MASLD患者では腸管側の因子として腸内細菌の質的量的異常、腸管透過性亢進、または内因性アルコールの増加が起こりやすい環境であると考えられている(肝臓 65巻9号 420-432, 2024)。

日本ではMASLD/MASHのための市販薬がまだないため、基本は食事と運動療法になります。

まずは体重が増えないことが重要

お金をかけず、安上がりな方法として毎日朝1回体重を測定します。前日より1kg増えていたら、その日はたべる量を減らし、いつもよりは歩くようにしましょう。当日中に元の体重に戻せます。知らないままに2-3kgの体重増加だと、1日ではなかなか元に戻せません。

実践していただきたいこと 継続可能な「習慣の見直し」

BMI 25.0 kg/m2以上のかたではまずは体重の5%以上減量で脂肪化の改善、7%の減量だと炎症・線維化も改善 BMI 25.0 kg/m2未満では体重3-5%の減量を目標(J Hepatol 2024;81:492-542.)

まずはタバコを吸う方は禁煙しましょう。アルコールを飲む方は中止または大幅に減量しましょう. 飲めば飲むほど肝がんの発生率があがります。

【1】食事はよくかんで、時間をかけて食べる 大食い、早食い、一気飲みは肝臓に負担がかかります

主食(ごはん・パン・麺)などの糖質を控えめに 特に甘いパンは控える 筋肉量が減らないように蛋白を摂取する。

  • ジュース・甘いお菓子・スナック類は控える 飽和脂肪酸を控える
  • 特に甘いジュースは控える 人工甘味料はホルモンに影響を及ぼして体内に脂肪を蓄える 
  • 野菜・キノコ・海藻(食物繊維が多いもの)やたんぱく質(脂身の少ない肉)・白身魚・豆(納豆など)を意識的に増やす
  • 未熟な青いバナナに含まれるレジスタントスターチ(体内で消化されないでんぷん)が腸内環境を改善し肝臓負担を軽減

【2】糖質制限(1日130g以下)+高たんぱく+有酸素運動+筋トレが推奨

運動療法

理学療法士から運動強度 4~5 METs の有酸素運動(20~30 分/日)と筋力トレーニング(15~20 分/日)連日行う。

食事療法

管理栄養士から 30 分間指導 1 回。食事エネルギー量/日、25~30 kcal/kg×標準体重. エネルギー産生栄養素比率%、たんぱく質:脂質:糖質が 15~17:25:58~60(虎ノ門病院の治療を参照)

  • 20〜30分のウォーキングを週3日以上 
  • 有酸素運動は肝臓内の脂肪を減らす効果あり   
  • 筋トレ(スクワット・腕立て)、難しい場合は誰でも簡単にできる肝炎体操
    肝炎体操について詳しくはこちら

MASLD/MASH そのものを治療する薬剤ですが治験中の薬物はありますが、日本国内では現在まだ承認されておりません。
脂質異常症治療薬, 糖尿病薬, ビタミンE, 降圧剤で効果が期待できる薬剤は以下のようです。
脂質異常症治療薬:スタチンはコレステロールや中性脂肪を低下させることで脂肪肝を改善する可能性

スタチンの使用は全死亡率(HR=0.233,95% CI 0.127-0.426),および肝関連イベント(HR=0.380,95% CI 0.268-0.539)を低下
(Gut, 73(11): 1883-1892, 2024).
ペマフィブラート(商品名:パルモディア)はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体αに対する選択的モジュレーターは肝硬度や炎症の低下
(Clinical and experimental hepatology. 2022 Dec;8(4);278-28)
ビタミンE: 脂肪の酸化を防ぎ、病気の進行を抑える効果が期待

糖尿病薬:ピオグリタゾン(アクトス®)脂肪沈着を改善  膀胱がん合併が問題 

SGLT-2阻害薬 糖の再吸収を阻害することで体重を減らし、肝組織改善効果が期待できる可能性( Hepatol Commun 2022;6:120-32).

GLP-1受容体作動薬 胃の動きを緩慢にし、食欲抑制を促し、体重を減らす  心血管イベント抑制(J Hepatol 2024;81:492-542).

降圧剤:ロサルタン等のアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が MASHの肝臓の炎症や線維化を抑制することが期待される。

2024年3 月に米国食品医薬品局(FDA)はレスメスチロム甲状腺ホルモン受容体β作動薬のレスメチロムをMASH治療薬として初めて

迅速承認.推定薬価が年間47,400ドル(約700万円/ 年),MASH消失率が約30%。日本では治験が行われていないので使用不可

治験中のMASHの薬物治療

GLP1/グルカゴン受容体作動薬のSurvodutide スルボデュチド

Sanyal AJ, Bedossa P, Fraessdorf M, et al. A phase 2 randomized trial of survodutide in MASH and fibrosis. N Engl J Med 2024; 391 (4): 311―319

線維化の制御率 最高67%

グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬 チルゼパチド,

Loomba R, Hartman ML, Lawitz EJ, et al. Tirzepatide for metabolic dysfunction-associated steatohepatitis with liver fibrosis. N Engl J Med 2024; 391 (4): 299―310

線維化の制御率 最高62%

自由診療での薬物療法

肥満のある2型糖尿病のある人の治療薬であるGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(マンジャロ) 週一回の注射  

セマグルチド(オゼンピック)より体重減少作用が強い 

すい臓に働きインスリンを分泌促進、血糖値を上げるグルカゴンを抑制。また、胃の動きを遅くする効果があり、急激な血糖上昇が抑える働きがあります。 脳にも働き、食欲を抑制する作用があります。

その他

MASLDの治療において、整腸剤(プロバイオティクス)は有望な補助療法として研究されています. 善玉菌を補給することで腸内フローラを改善し、腸のバリア機能を強化します. これにより、肝臓への毒素流入を減らし、肝臓の炎症や脂肪化を軽減するメカニズムが示唆されています. この結果、肝機能指標や脂質代謝、炎症マーカーの改善に役立つ可能性が複数の臨床試験やメタアナリシスで示されています. 一方、単独治療では治療効果には限界があり、現時点は補助的な役割です. Front. Cell. Infect. Microbiol. 2022;12 doi: 10.3389/fcimb.2022.997018

ただし有害事象はなく、身体に優しく、薬剤費も安いところはいい点だと思います。

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